はなの読書記録

漫画、時々小説の感想置き場

『架空OL日記 1 』 感想

今回は初めて漫画ではなく小説の感想を。いやこれは小説ではなく日記なんだけれども。

 

 『架空OL日記 1』 バカリズム

 

まずこの作品を選んだ理由として、最近映画化が決まったので、久しぶりに読み返してみようと本棚から引っ張り出したというわけです。映画早く観たいな。

バカリズムの才能にはよく驚かされるけれど、この作品は本当に天才だなと言うほかない。神は彼にずば抜けた観察力を与えました。合掌。

例えば、この作品中の「ガンダーラ 2月4日」を取り上げて彼の才能がいかにすごいかを少しでも説明したい。私の文章ではちっとも伝わらないだろうが、それでも説明したい。

まずはシチュエーション。同僚とお買い物。口紅を試すため、お姉さんが塗ってくれる間息を止める。

これ。わかる〜って人絶対いる。なんか気になってしまうよねお姉さんたちは気にしてないかもしれない些細なこと一々気にしてしまいたくなるよね。でもバカリズム本人は実際こんな状況になったことがあるのだろうか?だってジェンダーレスが叫び始められたこの頃だって、美容部員のお姉さんに口紅を塗られる経験をしたお兄さんは多くはないと思う。お姉さんに口紅を塗られる状況、そこから鼻息のことまで想像して書けるバカリズムの才能よ……。

そしてタイトルにもなった、ガンダーラ。結びの一文で笑ってしまったけれど、実は私は世界史の分野に明るくないためガンダーラの詳細がわからない。でも何となく言いたいことはわかる。この、「言いたいことはわからせておいて、その上で少し聞き馴染みのない単語を使う」ってなかなか加減が難しい。それをいとも簡単にやってのける。すごい。普通なら天国だとか、三途の川とかそういうありがちな単語を選んでしまいそうになるのにあえてのガンダーラ。ああ行ってみたいなガンダーラ

この作品を読ませた時母親はとても面白いと読んでくれて、その後に「これ大阪のおばちゃんバージョンが読みたい!」と言っていた。でも私からしてみたらそれはナンセンスだなあと。

だってこの作品の書き手を都心で働くOLでなく大阪のおばちゃんに設定してしまったらそれは日記ではなくあるあるネタにしかならないと思う。「あ〜大阪のおばちゃんってそういうとこあるよね」ってそれだけの笑いで終わってしまう気がするのだ。この作品が面白いのは読み手である私たちが、本当にこの日記を書いているのはOLではなくバカリズムという男性ということをわかっていて、その彼がこうやってあたかも今日あったことのようにセンス良くわかりやすく文章を綴っているから面白いんだけど、それが大阪のおばちゃんという架空の書き手になるとまずそもそも大阪のおばちゃんが日記書く?ってなるからだ。いや絶対大阪のおばちゃん日記書かないでしょ。知らんけど。彼女たちは少し皮肉の効いた短い文章をまとめるよりも、実際に話をさせた方が何万倍も面白く勢いがある生き物だと私は勝手に思い込んでいる。というか話すネタが多すぎて文章が追いつかなさそうだなとも。だからこの作品は架空のOLが最適解な気がしている。

今現在1と2が出ているが、文章も長くないしこれといった難しい内容があるわけでもないのでとても読みやすい。ぜひ気軽に手に取ってみてほしい作品だ。

 

ちなみに話は逸れるけれど、いい歳していまだにEテレをよく見てしまう私はビトワのマスーニョが大好きです。よく考えてみたらビトワっていとうせいこうさんやらマキタスポーツさんやら豪華な出演陣だし、彼らの掛け合いも大人が見てもクスッと笑えるものだよね。ビトワはいいぞ〜。

 

次は何を書こうか全然決まってないのですが、そろそろ中村明日美子先生の作品の感想でも書きたいところ。おしまい。